出 版 物
月刊誌「改革者」2009年3月号
「改革者」2009年3月号 目次
 

羅 針 盤(3月号)
           「官僚を使いこなせ」と指示したのは麻生首相のはずだ

                          堀江 湛
              尚美学園大学名誉学長・政策研究フォーラム理事長


 麻生首相はご存知二月五日の衆院予算委員会で「郵政民営化には反対だったが小泉総理の下で内閣の一員として最終的に賛成した。 みんな勘違いしているが私は郵政を所管する総務大臣だったが、民営化反対なのではずされ、担当大臣は竹中さんだった。 私が民営化をしたという濡れ衣をかぶされるのは甚だ面白くない」と発言した。 もっともプログでは昨年の総裁選公開討論で「間違ってもらって困るのは、(自分は)郵政民営化を担当した大臣だ。 忘れないでください」と演説した。お前こそ忘れるなと茶化されている。 小泉首相は政権担当に当たり郵政改革を行政改革の本丸と呼び、内閣の中心政策に据えた。 元来郵政改革の焦点は当時三四〇兆円にも上る郵貯、簡保の資金が大蔵省の資金運用部に預託を義務づけられ、 これが財政投融資の原資として道路公団をはじめとする特殊法人(公社、公団等)に融資され、、非効率かつ放漫な経営の原因となるばかりか、 大蔵省および所管官庁の天下りと渡りのポストと化していた。この改革が本来の目的だった。 ただし小泉内閣成立の時点では財投改革は曲がりなりにも完了し、残った民営化が最大の争点になっていた。 平成十三年四月小泉内閣が発足したが、その正月、一府十二省庁に再編された新しい行政体制がスタートした。 これは行政の簡素化と同時に衆院の小選挙区比例代表制の導入に対応する時代の要請に応じた首相権限の強化と政治主導行政の確立を狙ったものだ。 内閣府が強化され、経済財政諮問会議をはじめとする四つの諮問会議が置かれ、省庁の壁にとらわれない首相の特命事項を所掌する五人の担当相が任命されることとなった。 郵政改革は国の経済財政と深くかかわる。 そこで首相を本部長とする郵政民営化推進本部が立ち上げられ、金融と経済財政政策を兼担する竹中担当相が経済財政諮問会議との連絡、 関連省庁の施策の統一、法案化の実務等を担当し、民営化の具体的方針に懐疑的な日本郵政公社の抑えとして、 元来郵政改革に反対の麻生氏を所管の総務大臣に起用、内閣に封じこめた。旧宏池会の河野グループ重用で、 大派閥復活を阻止する高等戦術でもあった。 竹中、麻生両氏とも諮問会議の構成員で推進本部の副本部長だ。 麻生氏が担当相という新しいポストの設置になじめず、与えられた役柄に不満で所掌官庁の官僚に使いこなされてしまった点に今回の騒ぎの原因があったのだ。
ホーム
政策研究フォーラムとは
研究委員会
海外調査
研修会
出版物
リンク
お問い合わせ