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月刊誌「改革者」2009年10月号
「改革者」2009年10月号 目次
 

羅 針 盤(10月号)
               マニフェスト実行の条件整備

                          堀江 湛
              慶應義塾大学名誉教授・政策研究フォーラム理事長


 マニフェスト実行の条件整備 待望の政権交代が実現した。鳩山内閣の支持率は八〇%を超えた(JNN調査)。 首相の一九九〇年比温室効果ガス二五%削減の国連演説は高い国際評価を受けオバマ大統領および各国首脳との会談、 岡田外相とクリントン国務長官との会談も成功裡に終わり、先ずは順風満帆の船出だ。 川端文科、直嶋通商産業、中井国家公安・拉致問題の三氏が入閣された。ご縁の深い三氏だ。 フォーラムあげて政策面でお手伝いしたい。 民主党のマニフェストには日米地位協定の見直しが挙げられている。 これは駐留米軍と日本の法律との関係を定めた条約で、その焦点のひとつは駐留軍兵士の犯罪に対し両国政府の権限の線引きにある。 先進国における地位協定は米国政府にとって頭の痛い問題だ。米国国民にしてみれば自分たちの息子が命がけで同盟国を守るために駐留している。 犯罪を犯すのは悪い。しかしその息子たちが被疑者の人権保護が十分ではない駐留国の裁判にかけるとは何事だという圧力が政府に降りかかる。 地位協定の見直しを求めるからにはその前にわが国司法の条件整備が必要だ。 裁判員制度の導入は主権者たる国民の意思を直接反映させることによって閉鎖的な専門職業集団の判・検事の誤謬を正す司法民主主義のささやかな第一歩だ。 議会民主主義とは国のすべての機関が国民の信託を受けた国権の最高機関国会を通じて、あるいは直接国民に責任を負わなければならないという制度だ。 米兵の犯罪被疑者の身柄をいずれが勾留するかという問題は現行以上の双方満足のいく解決案を見つけるのは容易ではない。文化の違い、 相手方に対する固定観念等も加わって不満は残るだろう。 しかし米国国民の最大の疑惑、強圧的取り調べに伴う拷問については民主党提出で三度廃案になった「取り調べ可視化法案」を成立させればよい。 米国で一般的なすべての取り調べに弁護士の同席を認めることも必要だ。起訴前起訴後の長期の勾留も問題だ。鈴木宗男議員は勾留四三七日に及んだ。 弁明の余地はない。難解な日米の法律用語に熟達した通訳の養成も必要だ。 戦後の一連の改革で司法の民主化だけは手付かずに終わった。 なにが公益であるかを決めるのは判・検事ではなく国民とその信託を受けた国権の最高機関である国会であることを肝に銘じるべきだ。
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