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月刊誌「改革者」2009年12月号
「改革者」2009年12月号 目次
 

羅 針 盤(12月号)
      新政権の課題 政治主導行政で失われた十年の再来を防げ

                          堀江 湛
              慶應義塾大学名誉教授・政策研究フォーラム理事長


 新政権の課題 政治主導行政で失われた十年の再来を防げ 鳩山内閣が成立して政権交代と政治主導行政を実感するのが副大臣、政務官のテレビの登場が頻繁になったことだ。 いずれも若く発言は理路整然、説得力もある。 副大臣といえば様々な集会で大臣式辞の代読が役目だった自民党政権時代とはすっかり様変わりした。 行政の無駄削減を狙った行政刷新会議の事業仕分けの公開も国民をテレビに釘付けにした。 組閣直後のご祝儀相場が終わって低下しがちの内閣支持率を下支えする力になっている。 自民党の谷川秀善参院幹事長が記者会見で「こらおもろいわな。 何で自民党のときにせなんだったか」と悔しがったのも無理はない。 この行政の事業仕分けの手法は行政刷新会議事務局長に起用された構想日本の大蔵省出身、 加藤秀樹慶應義塾大学教授の提唱になるものだ。 元来地方自治体の首長の依頼で国の押し付けや各部局のセクショナリズムを排する予算編成の無駄削減の資料として工夫され一定の成果を挙げてきた。 昨年度から六省庁で国の事業仕分けを担当してムダをあぶりだしたが、省益と族議員団に阻まれて予算編成では無視された。   今回も事業仕分けで決まったのは予算ではなく、予算編成の資料なのだ。これをどこまで予算編成に反映させるかは各省政務三役の腕の見せどころだ。 ミイラ取りがミイラにならぬよう新政権の鼎の軽重が問われるところだ。 無駄には徹底的に大鉈を振ることが必要だ。但しこの不況下、企業も家計もひたすら支出の抑制に走っている。雇用不足は深刻だ。 再び失われた十年にしないためにも、無駄を削ぎ落とした予算も原資の一部にして前年度予算総額にこだわることなく、 とことん効率的なデフレ脱出に必要な財政出動を軸とする予算編成をしなければならない。 民主党には体系的成長政策がないという批判が強い。子育て、介護、医療あるいは農業、環境、観光といった領域を成長政策の焦点とするのならそのための大胆な規制緩和と各領域に巣食う既得権団体の中抜きを進めなければならない。 国際化に対応するFTAの締結も不可避だ。首相のリーダーシップのもと内閣を挙げて国民に訴えて理解を求めることが必要だ。 財政規律の達成も任期いっぱい最低四年間位の期間を見て当然だ。財務省主計局を納得させる強力な世論作りが急がれる。
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