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月刊誌「改革者」2016年3月号
「改革者」2016年3月号 目次
 

羅 針 盤3月号

            方向が定まらぬ補正予算と本予算に未来形成の視点を

               谷藤 悦史 ● 早稲田大学政治経済学術院教授、政策研究フォーラム理事長


  「衆参ダブル選挙」の噂がジワジワ広がっている。 連立与党の公明党は、対応が難しくなるとして反対しているが、最後に決めるのは首相だとされる。 悪いことに、政界やマスコミには、解散権は首相の「専権事項」だと言いふらす人が多いので、ズルズルそちらに流れかねない。 私は、勝手な解散が多いことが、衆院選をカネのかかるものにしている一大原因と思うので、制限すべきだと主張している。 この点では、珍しく多数派憲法学者と意見が近い。彼らは、首相とて勝手に解散できる訳ではないとの「解釈」から、それを言っている。 だが、私は解散を制限すべきと考えるもので、「解釈」だけでダメなら、改正すべきと思うので、そこで見解が分かれる。 憲法学者は、解釈が分かれる余地をなくすよう、憲法改正で明確にすればよいとは言わない。 そんなことをすると、九条改正に途を拓くことになる、と心配するのである。 これですべてがストップする。 安保法制の時は「違憲の疑いがある」と言って大騒ぎしたが、他のことでは下手をすると「やぶ蛇」となりかねないから、深追いはせず、 ただ「違憲の恐れがある」というだけだ。空しいことである。 憲法上の問題は、首相専権の解散の他にも沢山ある。 「首長」のはずの総理大臣の権限を制限している内閣法、地方自治を否定して一律の選挙制度を押付けている公職選挙法など、枚挙にいとまがない。 憲法学者は、負け犬のように「違憲の可能性がある」とばかり言っていないで、「おかしい」解釈の余地を残さないよう、憲法改正の提案をしてもらいたい。 憲法の精神に沿った条文にしてこそ、憲法が生きるのであり、それでこそ「立憲主義」ではないのか。 九条改正に手を貸すことはしないという姿勢を優先させる結果、憲法上の他の不都合には目をつぶっているのだ。 不幸なのは国民であり、日本国憲法それ自体もかわいそうだ。 「エセ立憲主義」はゴメンである。 この問題を上手くアピールするには、良い名称が必要で、私も乏しい知恵を絞っている。 「九条至上シンドローム(症候群)」はどうか? 九条に手を付けさせないために、他の憲法上の問題には目をつむるビョーキのことだ。 誰か良い案があったら教えていただきたい。
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