2021年「全国会議」概要報告
- 日時:2021年2月24日(水)~25日(木)
- 会場:大田区産業プラザPiO「大展示ホール」(東京都大田区南蒲田1-20-20)
- 参加者:325名(含:リモート参加者)
総合テーマ「コロナ後の世界と日本」
☆多数ご参加いただき感謝申し上げます。
この1 年は全国会議の直後から、日本のみならず世界中が新型コロナ・ウイルスの問題で揺れた激動の年でありました。
春先のいわゆる「第一波」にとどまらず、冬場になってもウイルスは相変わらず世界中で猛威を振るっております。もちろん世界の人々が無策だった訳ではありません。経済対策と感染防止の両立を図るべく、独自の対策を立てる国もあれば、医療崩壊を防ぐべく徹底した外出禁止令を出した国もあります。わが国の状況は欧米諸国と比べれば感染者数も死亡者数も少ないですが、アジア各国との比較では決して楽観視できる状況ではありません。一日も早いワクチンの開発・普及が待たれるところです。一方、この1 年は日本の内外で激しい変動が立て続けに起きました。8 月には安倍首相の突然の辞意表明から菅首相の就任、経済では、株価がバブル崩壊後最高値を更新しましたが、30年前の高揚感を想起させるものではありません。米国大統領選挙では、大勢判明後もトランプ大統領が敗北を受け入れず、政権移行の準備が進まないという異常事態が続きました。いち早くコロナ禍からの脱出を宣言した中国は、米国の混乱を尻目に国際社会で影響力を増しているようです。
今回の全国会議は、「コロナ後の世界と日本」と題し、感染症との戦いを交えながら新たな展開を見せている国内外の政治経済を見据えて、様々な議論を展開することにしました。
初日の第1 部会では、中国をめぐる国際関係を取り上げ、コロナ禍にあって中国は医療品の援助を通じた「マスク外交」を戦略的に展開しています。一方で、中国と激しく対立したアメリカでは政権が変わりました。中国がどのような外交を展開していくのか、アメリカの対中外交はどう変わるかなどについて議論を行いました。
2 日目午前の第2 部会では、国際経済がテーマで、コロナ禍で大打撃を受けた先進国や新興・途上国では、一部に急回復の兆しが見られるものの、今なお不確実性が蔓延しています。本部会では、米国、中国、アセアン諸国を中心に、2020年を振り返り、2021年以降の各国経済と国際経済関係について議論しました。
2 日目午後の第3 部会では、コロナ禍で痛んだ経済をいかに再生させるかを考え、ヒト、モノ、カネがグローバル展開することを前提とした経済体制の中、ヒトの往来、モノの流通も制約される一方、ICTを使った新しい取引や働き方が急速に浸透しています。コロナ後の経済も見通しながら今後の成長戦略を考えました。感染症との戦いという先行き不透明な状況で、我々はいかに前進すべ
きか。皆様と一緒に、多様な視点から議論を深めることができました。
第1日(2月24日・水曜日)
開会式 開会の辞 主催者挨拶 来賓祝辞 (12:30~13:00)
基調講演 「コロナ後の世界と日本の政治」 (13:10~14:10)
政策研究フォーラム常務理事・上智大学教授 河崎 健 氏






第一部会 「中国の外交戦略にどう向き合うか」(14:20~17:10)
報告者
東京国際大学 特命教授 村井 友秀 氏
慶応義塾大学教授 加茂 具樹 氏
笹川平和財団 上席研究員 渡部 恒雄 氏
司会者
平成国際大学教授 和田 修一 氏

村井氏は、永遠の隣国であり「遠交近攻」。日本の中で国際法の理解が深まっていないと述べ。 加茂氏は、中国がすすめる構造的権力の強化とは、自らに有利なように行動させる権力で、 国際秩序においてそのルールの順守を強制できる国家が持つ権力と述べた。 渡辺氏は、バイデン政権になっても、米中対抗関係は続くため日本の舵取りは難しいが、 同盟国の日本の重要性は変わらないと述べた。




第2日(2月25日・木曜日)
「国際経済はどこに向かうのか」(9:30~12:10)
報告者
国際貿易投資研究所 研究主幹 高橋 俊樹 氏
中央大学教授 谷口 洋志 氏
亜細亜大学アジア研究所 特別研究員 石川 幸一 氏
司会者
政策研究フォーラム常務理事 大岩 雄次郎 氏

高橋氏は、バイデン政権は国内産業の競争力を引き上げながら質の高い雇用を確保するという点で異なるアプローチとし、 米国は中国等のアジア経済圏を含むTPP11から締め出されることに不快感を示す可能性があると述べた。 谷口氏は中国国内リスクとして経済は自由にコントロールできないとし、中長期的には政治的リスクを伴う中成長と述べた。 石川氏はコロナ後のASEANの展望と課題として2021年に緩やかな回復とし、 ジェトロの日系企業調査では中国は2021年前半にビジネスが正常化すると多くが答えていると述べた。




第三部会 「日本経済の再生と成長戦略」 (13:10~15:50)
報告者
みずほ総研 主任研究員 岡田 豊 氏
国際基督教大学 客員教授 齋藤 潤 氏
日本総合研究所 副理事長 山田 久 氏
司会者
中央大学教授 川崎 一泰 氏

岡田氏は、コロナ禍は人が住まない街の脆弱さを露呈し、職住游近接が容易な地方都市にチャンスが巡ってくるも、 特色のない街は地域間競争を勝ち抜くのは難しいとも述べた。齋藤氏は、高齢化・人口減少がもたらす成長力低下克服のための4つの方策として、 労働生産性の引き上げ、労働参加率の引き上げ、出生率の引き上げ、外国人労働者の受け入れをあげた。 山田氏は、パンデミックのインパクトとして当面は「9割5分経済」の状態が持続すると見解を述べた。




☆「2021年全国会議」の詳細は会員誌「改革者」4月号・5月号に掲載されます。