2020年「全国会議」概要報告
- 日時:2020年2月12日(水)~13日(木)
- 会場:大田区産業プラザPiO「小展示ホール」(東京都大田区南蒲田1-20-20)
- 参加者:230名
総合テーマ「令和日本の展望と課題」
☆多数ご参加いただき感謝申し上げます。
平成から令和へと時代が移りました。平成の30年間を振り返るなら、まさに激動の時代でした。
政治的に見ると、「55年体制」と呼ばれた自民党の一党優位が崩れ、連立政権時代へと移りました。平成21年(2009年)の衆議院選挙では民主党が単独過半数を獲得し、 民主党を中心とした連立政権がつくられました。しかしながら、連立政権内での足並みの乱れや、東日本大震災という未曾有の自然災害への対応に追われて崩壊しました。 代わって自民・公明の連立政権が復活し、その後自民党内では、「安倍一強」の政治が続いています。
経済面では、平成2 年(1990年)までにバブル経済が弾け、「失われた30年」とも言われるように、今日でも低成長から抜け出せない状況が続いています。 平成20年(2008年)には、アメリカ発の金融危機(リーマン・ショック)で世界的に株価が暴落し、日本経済も大きな打撃を受けました。 その後に株価は回復しましたが、富の格差は拡大したままです。社会的には少子高齢化がますます進み、 地方で深刻化する若年層人口の減少は、地方の活力を奪いかねない問題になっています。 平成は、阪神淡路大震災、東日本大震災、大型台風の襲来による相つぐ被害など、大規模な自然災害が数多く生じた30年でもありました。
国際的に見れば、平成の始まりはヨーロッパでの冷戦終結と重なります。米ソ間やヨーロッパで、全面戦争の脅威は大きく低下しました。 ところがアジアでは、北朝鮮の核・ミサイル開発と中国の軍事増強や領土拡大などの動きの中で、安全保障をめぐる環境は冷戦期よりも益々悪化しています。 このように激動の平成から令和へと、時代は変わりましたが、平成の多くの課題は、そのまま新しい時代に引き継がれることになっています。
今回の全国会議では、「令和日本の展望と課題」と題し、令和がどのような課題とともに始まり、その新しい時代にいかなる展望を持つことができるかについて焦点を当て、論議を展開致しました。 初日の第1 部会では、東アジアをめぐる国際政治と安全保障を取り上げ、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国の海洋進出、アメリカと中国の対立などの中で、 日本はどのように対応すればよいのかについて論議を行いました。2 日目の第2 部会では、日本経済自体に焦点を当て、平成の30年の問題を振り返りつつ、 「持続的な経済成長」のために、日本経済の再生に求められる「真」の構造改革について論議を行いました。第3 部会は、 「ポスト税と社会保障一体改革」と位置付けられる全世代型社会保障を取り上げ論議を行いました。
今回の全国会議では、令和という新時代の幕開けにあたり、令和の展望と課題について多様な視点から論議を深めることができました。
第1日(2月12日・水曜日)
開会式 開会の辞 主催者挨拶 来賓祝辞 (12:30~13:00)
基調講演 「令和日本の展望と課題」 (13:10~14:10)
政策研究フォーラム理事長・早稲田大学教授 谷藤 悦史 氏






第一部会 「東アジアの政治・安全保障環境と日本」(14:20~17:10)
報告者
上智大学教授 前嶋 和弘 氏
同志社大学教授 浅野 亮 氏
元横須賀地方総監(海将) 堂下 哲郎 氏
司会者
平成国際大学教授 和田 修一 氏

前嶋氏は、アメリカが作った「自由で開かれた国際秩序」の破壊、理念重視から「国益」重視へ。 「トランプ現象」は必然かと述べた。浅野氏は解釈の対象が中国の場合、特に注意すべきこととして、宣伝と実態を峻別し、 不利な状況下で無理はせず、保身のための口実にも利用すると述べた。堂下氏は、令和日本の課題として、 国家として国益のためのリスクをとれる体制をつくることと述べ。3氏は討議を深めていった。




第2日(2月13日・木曜日)
第二部会「日本経済の求められる『真』の構造改革」(9:30~12:10)
報告者
大正大学教授 小峰 隆夫 氏
東京財団政策研究所 研究主幹 小林 慶一郎 氏
モルガン・スタンレーMUFG証券 シニアアドバイザー ロバート・フェルドマン 氏
司会者
政策研究フォーラム常務理事 大岩 雄次郎 氏

小峰氏は、日本経済の評価としては、「実感なき景気拡大」か、「実感なき景気後退」のどちらかで大差ないと述べた。 小林氏は、なぜ低金利・低インフレが続くのか報告し、財政への信認が維持されれば、デフレ均衡が続く可能性があるとも述べた。 ロバート・フェルドマン氏は、2005年から2017年までは教育費は一定、研究開発費は微減。しかし社会保障費は4.7兆円増。医療費は9.7兆円増。 このような歳出構造に持続性があるかどうかが問題。真の構造改革の必要性を述べた。




第三部会 「全世代型社会保障の行方」 (13:10~15:50)
報告者
中央大学大学院教授 真野 俊樹 氏
嘉悦大学教授 和泉 徹彦 氏
法政大学教授 小黒 一正 氏
司会者
中央大学教授 川崎 一泰 氏

真野氏は、資本市場に飲み込まれる可能性があるヘルスケア産業(含むメディカル)と、 今までの社会保障という位置づけの境界線をどう置くかという視点で報告された。和泉氏は、教育は社会保障に含まれるのかとして、 全世代型社会保障改革は、多様な学び、多様な働き方、多様なライフスタイルに応じて安心できる社会保障制度を目指すべきとした。 小黒氏は、年金改革の方向性、財政検証では後期高齢者医療制度の診療報酬に自動調整メカニズムを導入すべきと見解を述べた。




☆「2020年全国会議」の詳細は会員誌「改革者」4月号・5月号に掲載されます。