2022年「全国会議」概要報告
- 日時:2022年2月21日(月)~22日(火)
- 会場:大田区産業プラザPiO「大展示ホール」(東京都大田区南蒲田1-20-20)
- 参加者:300名(含:Webリモート参加者)
総合テーマ「国際情勢を踏まえた日本の政策課題」
☆多数ご参加いただき感謝申し上げます。
2021年秋に行われた第49回衆議院総選挙は、与党の勝利に終わりました。コロナ対策で閉塞感を見せ、支持率が大きく低下していた管政権でしたが、自民党はトップを岸田首相に置き換え、有権者の目先を変えることに成功したと言えます。
総選挙で問われたものは、自民党政権の実績よりも、野党の政治的役割や選挙直前に合意した野党4党の共闘についてであったように思われます。立憲民主党は小選挙区での票の積み増しを狙って、共産党、社会民主党、れいわ新選組とのあいだで政策協定を結び共闘態勢で臨みました。しかしながら、その政策には実現がむずかしい課題も多いばかりか、共産党との選挙協力に対する批判も根強く、立憲民主党は議席を減らしました。議席を伸ばしたのは、野党共闘に加わらなかった日本維新の会と国民民主党でした。この総選挙結果を踏まえて、今後、野党はどのような姿勢で与党と対峙すればいいのでしょうか。
一方、国外において無視できないのが中国の動向です。コロナにより主要国の多くで経済活動が停止状態に陥る中、中国経済はいち早く立ち直りを見せました。国内では習近平体制が一層強化され、香港の民主派を一掃するとともに、東シナ海や南シナ海での勢力拡大の動きを活発化させています。アメリカではトランプから民主党のバイデンへ政権が交代しましたが、米中対立は依然厳しさを増しております。
国内の経済や社会も、コロナ禍の影響を大きく受けてきました。その中で進んだのが、テレワークやオンライン会議の拡大という働き方の変化です。それは、長時間労働の是正を柱とする働き方改革やライフサイクルの変化にとっても大きな意味を持っています。その新たな変化は政府が推進するデジタル・トランスフォーメーション(DX)とも相まって、社会を大きく変える可能性が出てきています。
これらを踏まえ、初日の第1部会では、衆議院総選挙の総括と野党の今後の重点政策について立憲民主党と国民民主党の代表の方に出席いただき、国会運営に臨む方針や22年夏に予定されている参議院通常選挙に向けた対策などについて議論を致しました。
2日目午前の第2部会では、中国をめぐる安全保障と経済について議論し、日本は安全保障では中国とさまざまに対立している反面、日本経済は貿易額で第一位となった中国との関係を無視しては成り立ちません。このような安全保障と経済のジレンマをどう乗り越えることができるかを考えました。2日目午後の第3部会では、コロナ禍で進められたテレワークやオンライン会議を通じて明らかになった働き方の課題を捉えつつ、デジタル技術を活用した豊かな働き方を実現していく際の課題と進むべき方向性を議論しました。
内外の政治・経済・社会情勢の変化を受けて、さまざまな課題が生じています。今回の全国会議では、新しい課題を明らかにしつつ、それらにどう対応していったらいいのかについて議論を深めることができました。
第1日(2月21日・月曜日)
開会式 開会の辞 主催者挨拶 来賓祝辞 (12:30~13:00)
基調講演 「総選挙後の政治課題 」 (13:10~14:10)
政策研究フォーラム理事長・早稲田大学名誉教授 谷藤 悦史 氏






第一部会 「衆議院議員選挙の総括と各党の重点政策」(14:20~17:10)
報告者
立憲民主党 参議院議員 野田 国義 氏
国民民主党 参議院議員 大塚 耕平 氏
ノンフィクション作家、評論家 塩田 潮 氏
司会者
上智大学教授 河崎 健氏

野田氏は衆院選総括として、野党結集して与党に対することを第一義としたが、直すところは直すことが大切と述べ、大塚氏は、 何とか生き残ったというのが端的な総括であると述べた。 塩田氏からは、コロナによって写し出された衰退した日本、長期低迷、先進国からの脱落という歴史的転換期での選挙であったが、 直前での表紙の取り換えの秘策や野党の無策によるところで、今回の国民の審判結果となったと述べた。




第2日(2月22日・火曜日)
「対中関係における安全保障と経済のジレンマ」(9:30~12:10)
報告者
防衛大学校教授 佐々木 智弘 氏
早稲田大学大学院教授 青山 瑠妙 氏
中央大学教授 谷口 洋志 氏
司会者
平成国際大学教授 和田 修一 氏

佐々木氏は、今年秋に行われる5年に1度の党大会において人事が決定されるが、3期目を目指す習近平総書記の党中央政治局での権力基盤は盤石と述べた。 青山氏は中国外交を占ううえで、国際社会の動きに合わせて変わる可能性と国内に焦点を合わせなければならないのかがあるが、習近平は国内しか見ていないと述べた。 谷口氏は世界経済において中国の存在感がどんどん強まっており、特に中国貿易は小国にとって依存度が強く影響力が増して、強い立場になりつつある。また、 世界の仕組みに根を張り、習近平には戦略的思考があると述べた。




第三部会 「DX推進と働き方改革」 (13:10~15:50)
報告者
東洋大学名誉教授 山田 肇 氏
連合総研 主幹研究員 中村 天江 氏
東洋大学教授 久米 功一 氏
司会者
中央大学教授 谷口 洋志 氏

山田氏は、少ない生産年齢人口で日本を支えるには生産性を圧倒的に改善するのが王道であり、DXが求められる理由でもある。今後、医療・介護のDXや行政のDX、 その先に経済社会全体のDXがあると述べた。中村氏は、テクノロジーの進化における問題として、「思うように進まない」点を上げ、期待ほどのスピードで技術は実現・浸透しないと述べた。 久米氏は、デジタル化は定型業務を代替えし、非定型相互業務を補完する。非定型手仕事業務増加の背景には、高齢化や世帯規模の縮小、高スキル就業者の増加という需要面の構造変化があり、 非定型手仕事業務への参入が賃金格差を拡大させたと述べた。




☆「2022年全国会議」の詳細は会員誌「改革者」4月号・5月号に掲載されます。