活動報告

2023年「全国会議」概要報告

  • 日時:2023年2月20日(月)~21日(火)
  • 会場:大田区産業プラザPiO「コンベンションホール」(東京都大田区南蒲田1-20-20)
  • 参加者:295名(含:Webリモート参加者))

総合テーマ「歴史の転換点に立つ国際社会と日本

-ロシアによるウクライナ侵略がもたらした国際社会の変化と日本の課題を考える-

☆多数ご参加いただき感謝申し上げます。

 2022年の全国会議の直後、ロシアがウクライナに軍事侵略を開始しました。独立国家ウクライナを武力で侵略することは、明確な国際法違反であり、冷戦終結後の国際秩序に対する挑戦でもあります。ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国として拒否権を持っているため、国連安全保障理事会も機能障害に陥ってしまいました。
 ウクライナ戦争は、経済的にも国際社会に大きな影響を与えました。ロシアに対して取られた経済制裁に伴って、ロシアからヨーロッパへの天然ガスや石油の輸出が止まり、供給不足からエネルギー価格が高騰してしまいました。またウクライナが小麦の主要輸出国であるため、世界的な小麦生産量に不足が生じ、小麦価格の高騰を招くとともに、途上国は食糧不足に陥っています。加えて、エネルギー価格の高騰は、製造や輸送、日常生活のコストを押し上げて、国際的にもインフレを加速させることになってしまいました。
 このような国際環境の悪化は、わが国にも多大な影響を与えています。ウクライナ戦争に伴うエネルギーや食糧の価格高騰に加えて、アメリカがインフレ抑制のために高金利政策を導入したことで、急激な円安・ドル高が起きてしまいました。円安はすべての輸入品のコストを引き上げることになり、相次ぐ商品の値上げラッシュを招き、物価高に直面することになりました。その一方で、物価高はまだ賃金には反映されていません。
 このようなウクライナ問題によって引き起こされた国際社会の大きな変化に対して、日本はどう対応すれば良いのでしょうか。今回の全国会議では、これらの問題を総合的に検討いたしました。
 1日目は、基調講演で国際秩序の変化と日本の外交課題についての問題提起に続き、第1部会において、野党の経済政策について議論しました。歴史的な円安と物価高に直面するなかで、野党はどんな政策を持ち、与党と対峙するのでしょうか。立憲民主党と国民民主党の代表にご参加いただき、野党の経済政策について専門家とともに議論いたしました。
 2日目午前の第2部会では、ウクライナ戦争の終結方法とその後の国際秩序について議論を行いました。長期化の様相と呈しているウクライナ戦争をどう終結させることができるのか、また終結後の国際秩序はどうなるのか、についてロシア、ヨーロッパ、アメリカの専門家が議論いたしました。
2日目午後の第3部会においては、ウクライナ戦争によってもたらされた日本の経済危機が、われわれの日常生活や雇用に対してどんな影響を与えるかをテーマとしました。食糧やエネルギー問題、労働・雇用などの面でどんな対応を取るべきか、について議論しました。
 ロシアのウクライナ侵略に伴って歴史の転換点に立つ国際社会にあって、その課題は何か、それにわが国はどう対応していったら良いのか、議論を深めることができました。

第1日(2月20日・月曜日

開会式 開会の辞 主催者挨拶 来賓祝辞     (12:30~13:00)
基調講演 「ロシアによるウクライナ侵略後の国際秩序の変化と日本の外交課題」 (13:10~14:10)
政策研究フォーラム常務理事・平成国際大学名誉教授 和田 修一 氏

主催者挨拶:谷藤 悦史 理事長
来賓:坂田 幸治 電力総連会長
来賓:川合 孝典 参議院議員
基調講演:和田 修一 常務理事
閉会挨拶:谷口 洋志 副理事長
会場風景

第一部会 「野党の経済政策で日本は救えるか」(14:20~17:10)

報告者
立憲民主党 代表 泉 健太 氏
国民民主党 代表 玉木 雄一郎 氏
中央大学教授 谷口 洋志 氏
司会者
元東京国際大学教授 大岩 雄次郎 氏

第一部会の皆さん

 泉氏は、20世紀モデルからの転換を図り、技術革新を取り戻す。国内GAFAみたいなものをいかに創っていくか、国産重視だと述べた。 玉木氏は、給料が持続的に上がる経済を実現させるため、未来、人への投資を着実に行うべきと述べた。谷口氏からは、日銀の金融政策は世界の非常識である。 日本は経済成長があっても税収が伸びにくい構造になっている。減税を軽々しく言うのは無責任との見解を述べた。

報告者:泉 健太 氏
報告者:玉木 雄一郎 氏
報告者:谷口 洋志 氏
司会者:大岩 雄次郎 氏

第2日(2月21日・火曜日

ウクライナ戦争後の国際秩序はどうなるのか」(9:30~12:10)
報告者
慶應義塾大学教授 廣瀬 陽子 氏
帝京大学教授 渡邊 啓貴 氏
上智大学教授 前嶋 和弘 氏
司会者
東洋大学名誉教授 加藤 秀治郎 氏

第二部会の皆さん

 廣瀬氏は、ウクライナ侵攻で浮き彫りになった問題を国際社会が解決できなければ、世界は「力による現状変更」を認めることになる。 専制主義国家との対立軸の中でグローバルサウスの存在感も増す認識を民主主義国家はしっかりと押さえた上で、今後の世界秩序を考えていくべきと述べた。渡邊氏は、 欧州は集団防衛体制から集団安全保障体制への変容を試みたが、ウクライナ戦争は「外交による平和」の模索の挫折だと述べた。前嶋氏は、アメリカの視点からバイデン政権としては負けられない戦争であり 、徹底した国際協調によるNATO諸国との連携で欧米関係を修復したいが、政争の具の可能性もと述べた。

報告者:廣瀬 陽子 氏
報告者:渡邊 啓貴 氏
報告者:前嶋 和弘 氏
司会者:加藤 秀治郎 氏

第三部会 「今こそ必要な国民生活のための政策転換」 (13:10~15:50) 

報告者
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下 一仁 氏
中央大学教授 川崎 一泰 氏
法政大学教授 梅崎 修 氏
司会者
駒澤大学教授 清滝 仁志 氏

第三部会の皆さん

 山下氏は、半世紀以上も農政自体が掲げた目的や国民全体の利益に反する政策を実施。農政は矛盾の固まりで農政が農業を破壊している。減反は食料自給率を下げる政策と述べた。川崎氏は、資源価格上昇は海外企業収益の改善につながり、国内企業の収益にはならず、賃上げにつながらない。節電では経済成長から乗り遅れる。廉価で安定的なエネルギーを確保せよと述べた。梅崎氏は、現在の「ジョブ型」人事制度も、本来の定義とは離れ、その目標は「成果主義」と同じで、ジョブ型への移行は「椅子から立たせる方法」、「椅子に座らせる方法」ではないとの見解を述べた。

報告者:山下 一仁 氏
報告者:川崎 一泰 氏
報告者:梅崎  修 氏
司会者:清滝 仁志 氏

☆「2023年全国会議」の詳細は会員誌「改革者」4月号・5月号に掲載されます。