2024年「全国会議」概要報告
- 日時:2024年2月19日(月)~20日(火)
- 会場:「東京都立産業貿易センター浜松町館・5階展示室」(東京都港区海岸1-7-1)
- 参加者:303名(含:Web参加者)
総合テーマ「日本をどう再生するか」」
☆多数ご参加いただき感謝申し上げます。
2020年以降、世界は大混乱と危機的状況に直面し、国内外で分断と対立が生じています。それを招いたのは、2020年から世界的に大流行したコロナ禍、2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵略戦争(ウクライナ戦争)、2023年10月に発生したイスラエル・ハマス戦争、です。
これらの問題のうち、ある程度下火となったコロナ禍以外の問題は今なお世界を分断、動揺させています。
ウクライナ戦争に対して国連加盟国の4分の3がロシア非難に加わったものの、残りの4分の1は一度もロシア非難に加わっていません。また、ロシア非難・ウクライナ支援で結束した西側諸国は、パレスチナ・ガザ地区での人道的休戦国連決議では対応が割れています。
こうした世界情勢の混乱と分断・対立の一方、各国経済は2021年からインフレ問題やエネルギー危機に直面したものの、複数回の利上げを通じてインフレをある程度コントロールできるようになっています。こうした中で日本だけが金融緩和・財政緩和措置を続け、インフレ問題を残しながらも、回復の兆しを見せているのが現状です。
しかし、日本経済は、コロナ禍前の経済水準をようやく回復した段階であり、また、ここ10年の間にGDP、競争<力、幸福度、銀行、大学などの世界ランキングにおいて日本の地位が低下ないし低迷しており、これを転換すべく、再生・復活にむけての強いモメンタム(弾み、勢い)が求められています。
今年の全国会議では、「日本の再生」をテーマに、例年のように、基調講演と3つの部会を開催しました。
1日目の基調講演では、日本の現状を取り上げ、日本の再生・復活が求められる背景といくつかの重要課題を提起しました。これに続く第1部会では、目下の最重要課題である「持続的な賃上げ」を取り上げ、それが期待される背景、経済効果、実現のための手段・方策や課題などについて、立憲民主党や国民民主党の代表者を交えて経済政策の専門家ともに議論しました。
2日目午前の第2部会では、「求められる企業と労働組合の社会的責任」を取り上げます。企業や労働組合が直面する環境変化や、これからの企業と労働組合には何が求められ、何ができるのかについて、企業の社会的責任、企業倫理、労使関係・女性労働論の専門家が議論しました。 午後の第3部会では、世界情勢や日本の国際関係の在り方を左右する要因の1つとして「2024年米大統領選挙と米国の動向」を取り上げ、現職バイデン大統領やトランプ前大統領の動向、ウクライナやパレスチナ情勢の影響、米国国内での分裂拡大など不確定要素が多いなかで、米国の現状理解、可能な選択肢やシナリオについて、米国の政治、経済、社会・宗教、国際政治・安全保障の専門家が議論しました。 参加者の皆さまとともに、第3部会の議論を通して米国を中心とする世界情勢を把握し、第1部会と第2部会の議論によって労働組合の貢献と役割を改めて再認識される機会になりましたら幸甚に存じます。
第1日(2月19日・月曜日)
開会式 開会の辞 主催者挨拶 来賓祝辞 (12:30~13:00)
基調講演 「日本の再生を目指して」(13:10~14:10)
政策研究フォーラム理事長・中央大学名誉教授 谷口 洋志 氏






第一部会 「持続的な賃上げに向けて」(14:20~17:10)
報告者
立憲民主党 党企業・団体交流委員長 大 島 敦 氏
国民民主党 代表 玉木 雄一郎 氏
元東京国際大学教授 大岩 雄次郎 氏
司会者
中央大学教授 川崎 一泰 氏

大島氏は、バブル崩壊後、経営者は正社員を雇わない、新規事業をやらない、無借金にすることでリーマンを乗り切ったことが成功体験になっていると述べた。玉木氏は、現在のコストプッシュインフレから、賃上げが物価上昇を導くよう要求することが大事と述べた。大岩氏からは、日本国内から新興国へ投資がシフトし、イノベーションも遅れ、収益率も上がらないにもかかわらず、危機感は高まらないとの見解を述べた。




第2日(2月20日・火曜日)
「私たちには何ができるのか:企業と労働組合の社会的責任」(9:30~12:10)
報告者
高崎経済大学学長 水口 剛 氏
立教大学教授 首藤 若菜 氏
麗澤大学企業倫理研究センター長 寺本 佳苗 氏
司会者
宇都宮大学教授 中村 祐司 氏

水口氏は、企業年金は、労働者が最終的な受益者となる労働者のための資本である。この資本は労働者の利益のために使うべきであり、環境・社会に配慮して運用することが、結局は労働者にとっても利益となると述べた。首藤氏は、従来は産別最賃・特定最賃で組合にカバーされない人々の底支えをしてきた。組合の社会的意義はどこにあるのか。社会を牽引する組合運動をと述べた。寺本氏は、企業単体の短期的な利益だけを追い求めるのではなく、企業その他の組織との連関関係のもとで長期的に適切な範囲で成果を上げること、そのための自社の役割を考えて実践していくことが企業の責任の一つと述べた。




第三部会 「2024米大統領選挙と米国の動向」 (13:10~15:50)
報告者
国際貿易投資研究所 研究主幹 高橋 俊樹 氏
南山大学教授 山岸 敬和 氏
帝京大学准教授 藤本 龍児 氏
司会者
広島大学大学院教授、法学部長 永山 博之 氏

高橋氏は、バイデン大統領が気候変動対策を積極的に打ち出したのは、脱中国依存を目指す米国の経済政策の一環として、リチウムやバッテリーでの対中依存を減らし、米国の脆弱性からの回復を目指していると述べた。山岸氏は、トランプ氏はレーガン的な保守ではなく、変化した保守。敵対的ポピュリズムで、何をするかではなく、何を支持しない、何に怒っているという原理原則のない改革者と述べた。藤本氏は、米国では宗教に属していないと政治家になれない。無所属は0.2%。共和党の予備選では、宗教保守を味方につけなければ候補になれない。福音派と言われる宗教保守は米国人の3~4割になると述べた。




☆「2024年全国会議」の詳細は会員誌「改革者」4月号・5月号に掲載されます。